自由民主党の岩城光英です。


ただいま議題となりました原子力損害賠償支援機構法案につきまして、自由民主党を代表して、賛成の立場から討論を行います。


私の地元は福島ですが、この度の大震災及び原発事故に当たり、全国から、そして全世界から物心両面にわたり温かい御支援をいただいておりますことに対し、まずもって深く御礼を申し上げます。


その原発事故に関しては、事故自体の収束がいまだ見えておりません。さらには、被害者への対応、すなわち避難生活の解消、生活や事業の再建、子供の健康問題、地域のつながりの再生といった課題の解決が急務であります。その中で、本法案による賠償金の速やかな支払も重要な役割を果たすものであります。しかし、賠償に関する政府のこれまでの対応は、余りにも不十分で不誠実なものでありました。本法案も、当初の政府案は、国に責任はないと開き直り、全ての責任を東京電力に押し付けるという、何とも無責任なものでありました。


また、野党五党が共同提出した迅速な被害者救済のための仮払い・基金法案に対しても、当初の本院での採決では、協議が調っていないといって与党は反対したのであります。被害者の気持ちなど全く顧みない行動ではありませんか。しかるに、衆議院では修正協議の末、ほぼ野党案を丸のみするという結果です。それなら、なぜ最初からそうしないのですか。被害者から見れば、本当に腹立たしい思いです。このような政府・与党の行動は復旧・復興を遅らせているだけだということが、どうして分からないのでしょうか。


被害者の救済は一刻を争っています。本当に困っている人たちが大勢待っています。最近では、事故当初に比べまして報道も減り、被災者の苦しみが忘れられつつあるのではないかという懸念も出てきています。本法案を速やかに成立させ、さきに成立した仮払い・基金法と併せ、一日でも早く必要とする全ての方々に賠償が行き渡るようにしなければなりません。


さて、本法案の内容ですが、まず、与野党の修正協議を受け、国の責任を明確化した点は評価できます。国は、賠償機構の目的達成のため、万全の措置を講ずるとされています。我が国は、これまで安全の確保を大前提として原子力利用を国策として推進してきたわけですから、当然、今回のような大事故が起きてしまったことについて、国の責任を正面から認め、受け止めるべきであります。


我々自民党も、長らく政権を担っていた党として真摯に対応すべきであると考えており、これまで国会の場でも繰り返し反省とおわびを表明してまいりました。こうしたことも踏まえ、現在、我が党では、政府に先駆けて我が国のエネルギー政策を根幹から見直し、再構築する作業を急ピッチで行っております。


一方、政府に目を転じると、閣内ですら全くまとまりを欠いている状態で、政府全体としてのエネルギー政策の理念や哲学が全く見えてまいりません。菅総理は脱原発依存という個人の考えを記者会見で表明したかと思えば、海江田大臣はそれを鴻毛より軽いとこき下ろす始末です。残念ながら、総理、海江田大臣、どちらの方にも我が国のエネルギー政策、原子力政策に責任を持つ立場としての自覚が全く感じられません。このような醜態を世にさらしておきながら国の責任などと言われても、むなしく聞こえるだけであります。被害者の心には全く響いてきません。本当に責任が取れる人間が我が国のエネルギー政策、原子力政策の立て直しを行えるよう、何よりもまず総理が辞任し、体制を刷新する必要があります。


続いて、各電力会社の負担金についてであります。


我々自民党は、東京電力以外の電力各社についてはその負担金を今回の事故の賠償に充てるべきではないと主張してきました。与野党協議の結果、当初は他の電力会社の負担金も今回の賠償に充てることになりましたが、当然それは必要最小限であるべきです。また、法律の見直しの際には、この点も含め見直しが行われるべきと考えます。


電気料金は、今後、原子力発電の比率が低下し、化石燃料の比率が上昇せざるを得ないことを考えれば、値上がりが避けられないでしょう。この状況に輪を掛けて、今回の原発事故の賠償のための負担金が上乗せされることになれば、国民の生活や我が国の産業に対して大きな影響が及ぶことになります。特に被災地では、生活の再建や事業の再生のため血のにじむような苦労をされている住民や企業が数多いのです。これらの方々の苦労に追い打ちを掛けるような大幅な電気料金の値上げが行われることがないよう、政府に強く求めます。


また、本法案の附則では、原子力損害賠償法の見直し、原子力損害賠償支援機構法の見直し、さらには原子力に関する法律の抜本的な見直しという三段階の措置が定められております。これらについては、政府に着実な実行を求めるとともに、我々も国会の場で厳しくチェックしてまいります。


いずれの見直しにおいても、被害者への迅速かつ確実な賠償、電力の安定供給、日本経済の安定の三つの命題が満たされるよう、中長期的なビジョンに基づいた筋の通った見直しを行っていくことが肝要であります。もちろん、菅内閣ではなく、次の内閣においてこうした重要な作業をしっかりと行っていただくことを求めます。


去る七月二十七日、全国都道府県議会議長会において、岩手、宮城、福島の被災地三県の県議会議長が共同提案した菅総理に対する退陣決議が採択されました。決議では、菅総理が復旧・復興の足かせになっていると明記されています。


総理、あなたはこの場にいらっしゃいませんが、被災地から、あなたは要らない、早く辞めてください、もっと言えば邪魔だとはっきり言われてどんな気持ちでしょうか。被災地の意に反して総理の座にしがみついておきながら、復旧・復興に全力を挙げるなどとなぜ言えるのでしょうか。あなたの言う全力とは全く無力の略だということは、これまでの実績が証明しているではありませんか。現実を直視し、被災地の声に耳を傾ければ、辞任以外の選択肢はないことは、総理、あなたには分かるはずです。


さらには、外国人献金に絡む政治資金規正法違反や北朝鮮との二元外交など、我が国の総理としての基本的な資質さえ疑われるような疑惑が次々と浮上してきております。


このような国家的危機に当たり、菅総理にはこの国を導いていくだけの資質も能力も人望も全く欠けていることは明らかであります。これ以上、菅総理、あなたによる人災がひどくならないうちに、この国のために、被災地のために辞任なさってください。


そして、この議場の皆様、復旧・復興の足かせが取り除かれたならば、我が国が復旧・復興に向け一致団結できる体制を与野党を超えて共につくっていこうではありませんか。


このことを呼びかけまして、私の討論を終わります。(拍手)